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Interview
12/22(fri) 丈青&志宏 at ROOMS


腕を組み、眉間に皺を寄せて耳を傾ける。
それがJAZZの本当の楽しみ方だと、かつて小倉のジャズバーで老紳士が教えてくれた。



時代も流行りも変化する中、彼の薀蓄を鵜呑みにする気はないのだけれど、
物事を比較する場合、何か変わらない基準も必要なのかも知れない。



本当の意味でのJAZZを奏でる事が出来る、
若手のミュージシャンはどれだけいるのだろう。



佐藤丈青。
言わずと知れた、新世代ジャズバンドの王者 「 Soil & "pimp" Sessions 」 のピアニスト。
しなやかに、そしてエレガントに煌く旋律。



伊藤志宏。
Shima & Shikou DUO のピアニスト。そして UA や一青窈、畠山美由紀とも共演する実力派。
モノクローム映画のように叙情的で、文学小説のように情熱的。


その丈青と志宏、若手奇才ピアニスト二人による奇跡のピアノデュオライブが、福岡で開催された。
今回の 「Interview」 ではそのピアノデュオライブの誕生秘話と、想像もつかない二人だけの世界に少しだけ触れてみたい。


特別に 「丈青×志宏」 の発案者でもある遠藤和華さんを迎え、
インタビューと言うより、私を含む四人の談笑をそのまま文字に起こした。


読み易い様に私の博多弁を標準語に正した以外は、
語尾も含め四人の会話をほぼ忠実に再現した内容である。


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CG : そもそも 「丈青×志宏」、この二人でピアノDUOライブをしようと思ったきっかけは?

和華 : ある時、ビル・エバンスの 「アローン」 と言うソロアルバムを聞いてたんです。
「アローン」 はビル・エバンスが一人で多重録音しているソロアルバムなんですが、これをピアニスト二人でやったら面白いんじゃないかなと思ったんです。しかもそれが自分の大好きなピアニストだったら、最高だなって。それで二人に声をかけたのが始まりです。

丈青 : ソロアルバムを聞いて、それを二人でって発想自体が面白いよね。

CG : じゃあ、それまで二人は知り合いじゃなかったって事?

丈青 : そう、和華ちゃんが会わせてくれたの。もちろん存在は知っていたけどね。
それまでは、会った事も話をした事もなかった...よね?


志宏 : そうですね。でもオレは、丈青さんの音源は結構聞いていたの。でもソイルとかじゃなくてね。友達がやっているバンドの音源を、しかもリハ音源を 「これいいでしょ?」 って聞かされて。その鍵盤を丈青さんが弾いていた。しかも 「PORTSCAPE」 (※ジャズ・ヒップホップ・バンド)とか聞いていたからね。


丈青 : それはかなり貴重だね。オレは島くん(Shima & Shikouo DUO のトランペッター)とはサイゲンジさんで一緒にやってたりしてたから、Shima & Shikou DUO の音源を島くんからもらってたから聞いていたよ。


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CG : 今回、たくさんの友人から 「えっ!?丈青さんと志宏さんって仲良いの?」、「仲良くないでしょ?」 と聞かれたよ。例えばトランペッターはマウスピースとか 「話のきっかけ」 があると思うんだけど、ピアニストってあまりないよね。実際の所はどう?ピアニストはストイックで天邪鬼なイメージなんだけど。

丈青 : そう、ピアニストは気分屋が多いからね。

志宏 :  確かに "一人でやっている感" は強いかな...。
それに、大体の奴より 「オレの方がスゴイ」 と思ってるから(笑) あ、これか書かないでね。

丈青 :  いや、いいと思うな。オレはそう言うの好きだよ。

CG :  じゃあ、お互いの印象は?

志宏 :  丈青さんはやっぱり...ハンコックみたいなピアニストだなって。
R&Bを弾かせたら、日本一なんじゃないかな。オレが絶対に出来ないテイストを全部持ってるしね。

丈青 :  ありがとうございます。
でも 「絶対に出来ないテイストを全部持ってる」 って意味ではお互い様だよ。
そうだね、志宏は ... やっぱり孤高な雰囲気はあるかもね。

志宏 :  確かに同世代の仲の良いミュージシャンも少ないし、
夜、セッションで集まったりも基本的にしないから。

CG :  「嫌われ者」 に近い感じだね。

志宏 :  ち、違うよ(汗) 群れたがらないだけだよ。


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CG :  確か和華ちゃんは、二人を最初に会わせる時も心配してたよね。

和華 :  凄く心配でした。

丈青 :  オレらの事を両方を知ってるから「お互いに文句言い出すんじゃないか」とか、
色々考えたんんじゃない?

志宏 : すぐ言う方だからね、二人とも。

CG :  細かい事を聞く様だけど、最初に会ったのは何処?

志宏 :  渋谷の...確かROOM近くのカフェだったよね。そうそう、アルバムのミックスやっててちょっと遅れてね。「すみません、本当にすみません」 が最初の一言だった。
で、嫌いなベーシストの話で盛り上がった(笑)

丈青 : ほぼ揃ったもんね。
味方が一緒じゃ駄目なんだけど、敵が一緒だとすぐ群れるんだよ。


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CG :  普段のライブの時と、"丈青×志宏" の時って何か違う?

丈青 : そうだね...丈青×志宏では、客観的な自分がいなくなる感じかな。
普段は冷静に自分の事を見ている自分が何処かにいるんだけど、この二人でやってるとね。いなくなるんだよ。何て言っていいかわからないけど、子供みたいになってるんじゃないかな。

CG :  二人とも演奏中は、ニコニコだもんね。

丈青 : それにソイル以外だと、自分がリーダーの仕事が多いんだよ。
全部自分で決めてね。当たり前だけど、責任感がある。
でも 「丈青×志宏」 は対等じゃない。だから楽なのかも。それに会うたびに成長しているのがお互いわかるし、だから志宏に対しても 「こんな風に来るんだ」 とか驚かされる事が多い。やってる時って楽しいけど実はシビアだし、そしてやっぱり刺激になるんだよ。この人間味溢れる感じってなかなかないと思うよ。全部出ちゃうから。

CG :  意外と冷静に相手の音を聞いてるんだね。

丈青 : 聞こえる、聞こえる。
でもはしゃぐよね。いい意味でも。

志宏 :  悪い意味でも。
誰にも見せれないけど、俺の家で二人でリハーサルしてる時が一番楽しいかも。

丈青 : 大爆笑だよ。

志宏 :  この人、本気だからね。
最初は当日までリハーサルなく、当日に一発でやる人かと思ってた。
駄目元で 「リハしましょう」 って言ったら、「やろうよ」 って言ってくれて。

丈青 : ちなみに、オレはリハーサルが大嫌いだからね。

志宏 :  そうそう、P(ベーシスト小泉克人氏)とかが、
「何で丈青さんがリハやるの!?」 ってビックリしてたもん。「いいな、オレもやりたいのに」 って。

丈青 : 今までは 「リハーサルをやり過ぎると...」 とか思ってたんだけど、最近は本気なんだ。
リハーサルも本気、本番も本気。それが一番楽しいなって。

CG :  リハーサルはどんな感じでするの?

志宏 :  オレの家で練習してるよ。
演奏はしてるけど、結構しゃべってる時間が長いですよね?

丈青 : 演奏は4割、残りの6割はしゃべってるかな。

志宏 :  オレは演奏中も色々聞くよ。
「それどうやってるんですか?」とか。

CG :  「もうちょっとゆっくり弾いて貰っていいですか?」とか?

志宏 :  そうそう(笑)


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CG :  一緒にやってみてどうだった?

志宏 :  丈青さんはね。瞬間構築力が本当に凄いの。しかも、ものすごいスピード。
それに伴奏を付ける時が一番楽しいかな。やっぱりオレは伴奏が好きなんだよね。

丈青 : そのベーシスト的な発想は面白いね。
でも、それにちゃんと着地出来る志宏がスゴイんだけどね。
そうでないと一人で何かやってるだけだし、一人相撲だと一緒にやる意味ないから。

丈青 : 志宏は多分、なかなかインスパイアされないタイプだと思うよ。ちょっとした事やっても、 「へーあっそ」 みたいな感じじゃん。でもインスパイアされるとスゴイし、手が付けられない。インスパイアさせれたのはいいけど、後が大変みたいな。多分ある定点を越えないと、波が来ないんじゃないかな。

志宏 :  そうかも知れないですね。それにミュージシャンなら、その 「定点を上げていかないと」 とも思う。
でも、誰かが 「べしゃりと一緒だ」 って言ってましたね。こう言った普通の会話のテンポ感と、演奏のテンポ感が一緒なんだって。

丈青 : 志宏は...結構、話すの早いよね。
そう言ったタイミングと言うか周波は、オレと似ているかもね。
急に疲れて黙りこくるとことか。

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CG :  渋谷JZbratで開催された第一回目の 「丈青×志宏」 から一年経つんだけど、
今後はどの様に考えてる?

丈青 : そうだね。年に四回、今いいペースで出来ているからね。

志宏 :  東京、東京、福岡、東京。

丈青 : 来年はもっとやりたいよね。

志宏 :  そうですね。楽しみながらやりたいですね。


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今回、ROOMSでの福岡公演(12/18)と渋谷Jzbratでの東京公演(12/20)を観に行ったのだが、
両日とも素晴らしい内容だった。


丈青と志宏。
魂を削り出すかの様に奏でられた旋律と、むしろそれと相対する " 音と音の隙間にある休符の間 " が、
まるで二人の息づかいかの様に感じる生命感溢れるライブだった。


老紳士の言う 「JAZZの深み」 なんて、私には一生わからないかも知れない。
ただ二人の演奏を聴いて、ザワザワとした何かが心に触れたのは確かだ。


彼らは日々壊し、そして創造している。
丈青×志宏、次回は全く違ったライブを観せてくれるだろう。


Text : Common Ground